診療をしているとスタッフから「○○さんという方からお電話があって後から面会に来られるそうです」と言われた。名前に覚えが無いし「どこの誰?」と聞くも確認していないようで、ちゃんと確認するように注意した。

昨今電話を利用して様々な形の悪質な営業や勧誘に遭遇する。うっかり遭遇して嫌な気持ちにさせられるのは真っ平ごめんだ。そうならないためにも防御策を講じる必要がある。寂しい世の中。

患者さんも途切れたその時、その電話の方は来られた。

何と、少し前のことではあるが私が救急病院で診察した患児のお父さんだった。その児は6ヶ月未満の乳児で殆どショック状態になって早朝担ぎこまれた。慌てて血管確保すると同時に採血をしたが、火事場の馬鹿力というのだろうか、末梢血管が殆どしまりあがっていたのに処置がスムーズにいったのは奇跡としかいいようがない。救急車にも同乗し搬送先の病院まで呼吸は安定してきたものの「とにかく早く渡さないと」とその道程がとても遠くに感じた事を覚えていた。

入院後、適切な治療を施され無事に退院されたそうだ。「後遺症もなくおかげで元気になりました。入院先の先生から『あと少しでも遅かったら大変な事になっていた』と言われ先生が素早く対応されたおかげだと思います。どうか元気になった姿を見てやってください。」

わざわざ遠くから足を運んでお子さんを見せに来てくれた。小児科医冥利に尽きた。私は小児科医として当たり前の事をしただけ。でも心の中でその児に向かって“頑張るのよ、助かるのよ”と、ある意味自分にも言い聞かせながら搬送先に向かった私の心の底からの医療に対する、小児科医としての信念がこの一見の一時間にも満たない診療の中でこのご両親が汲み取ってくれたのだと思うと涙が出そうなくらい嬉しかった。

足掛け5年目にはいる夜間診療の仕事。この一期一会でようやく報われた気がした。

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